出会い

月島での出会いは衝撃的であった。
そんな車があることは、昔からなんとなく知ってはいた。
ただ、いままでぼくの意識に入ってくることがなかったのは、Smartで
いっぱいだったからなんだと思った。
コペンUE2は静かに、ただ圧倒的な異彩を放ちながらそこに在った。
いわゆるファミリー軽カーの群に並んで置かれたそれは、おおよそカタロ
グのスペックから想像させるような貧弱さは微塵もなく、軽自動車には似
つかわしくないほどに品位ある佇まいは、まるで自己の発する引力によっ
て密に圧し固められたかの様に凝縮し、確かな質量を感じさせるものであ
った。
純粋な「車」として、圧倒的な魅力を感じたぼくは、それが一瞬で欲しく
なった。
それは自分にとって初めての感覚であった。
たしかにSmartが持つ独特なガジェット感に惹かれていたのではあるが、
それは純粋な車としてというよりは、シティコミューター、またはトラン
スポーターとしてのものであった。そして、それはSmartが唯一無二とし
て存在するコンセプト、まさに都市生活者のためのスマートでクールな移
動手段。1、2人で乗る車に巨大なバックスペースは必要ないだろうとい
う、そんな考え方に惹かれていたのだ。そんな割り切りかたが出来るライ
フスタイルが好きだったのだ。
でもコペンにはそれとは180度違った感覚、いや感情というべきかもしれ
ない、この車を思うように操ってみたいという、車の持つ純粋な楽しみみ
たいなものを感じていた。
コペンを見つけたのは営業時間もそろそろ終りという頃であったが、無理
を言って、座ってみたいと申し出た。
UE2はキャメル色のアルカンターラ生地で包まれた専用のレカロシートが
奢られて、パールホワイトの車体に納まった姿が夕日に映えた。
恐る恐るドアを開け、車内に乗り込んだ。
今迄に乗ったことのある車にはなかった、異常な座面の低さに驚いた。
まるで脚を放り出してすわる座椅子のような感覚に、
「ふむふむ、やっぱりスポーツカーだよ。これだよ、これ。」
スポーツカーなんて全然知らないのに・・・。
ちなみに乗り込む前に気になった、頭が屋根に当らないかということ。
180cmのぼくだと全然問題なく、まだあと3cmくらいは余裕が在った。
momoのハンドルもディンプル加工された皮革貼りは上品で、コンパクト
にまとまったメーター類と相まって、とてもよく走りそうな雰囲気を感じ
させている。
オープンにしてみますかと言われ、恐縮しながら屋根を開けてもらうと、
頭上に広がる広大な空に、無限の可能性を感じたのかな、
もう後戻り出来ないまでに、惚れ込んでしまっていた。
渋谷区 富ヶ谷交差点
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